あなたの元にも訪れる「敷金返還交渉人」の実態


交渉になると貸主が圧倒的に不利

 入居者に代わって交渉を行い、オーナーから敷金を取り戻す、といったビジネスがここにきて急速に広がりつつある。オーナーや管理会社としては、こうした事態にどう対応していけばいいのだろうか。彼らの実態や実際の交渉の手口についてみてみることにしよう。

交渉成功率は9割を超える
 「管理会社の中で、原状回復時の精算がきちんとされているのは2割ぐらいではないでしょうか。ひどい管理会社になると、本来オーナーが負担しなければならない金額をどれだけ入居者に負担させたか、に応じて社貝に歩合給を与えているところもあるのです」と、入居者より敷金返遠や原状回復についての相談に応じているNグループ(千葉県千葉市)の同社長は語る。
 これまで、こうした管理会社側のボッタクリに入居者側は泣き寝入りをするしかなかったのだが最近では「あなたの敷金とり返します」などのキャッチフレーズで、入居者の代理人として敷金返還交渉の当事者となったり、入居者、アドバイスを行う業者が登場し始めている。そして彼らの手にかかれば、ほとんどのオーナー・管理会社が入居者側の主張をのまざるを得なくなる、というのが現実だ。
 「今年の1月に事業を開始して既に300件の依頼書をこなしましたが、成功率は98%です」と語るのは、敷金返還交渉代行ビジネスを展開するN社(東京都港区)の同社長だ。
 また、広島市を地盤に、敷金返達交渉のアドバイザー業務を展開するC社の同社長は「2割ほどのオーナーは、内容証明郵便を送っても交渉の席につくことを拒みますが、それ以外のオーナーは話し合いに応じます。そうなれば、額は異なれど100%のオーナーが敷金返還に合意してくれます」と語る。
 特に今年2月に原状回復新ガイドライン(以下ガイドライン)が国土交通省から発表されたことで、交渉は入居者側圧倒的に有利になった。貸主からすれば「ガイドラインは法律ではない、守る必要はない」という主張だろうが、これも裁判の場ともなれば認められない可能性が大だ。
 ちなみに敷金は将来返還されることを前提として入居者が貸主に預けているため、法律的には入居者の貸主に対する債権となる。債権者は債権回収のためには強制執行などの強硬手段を用いることが認められていることからも分かるように、債務者に比べ優位な立場にある。つまり敷金返還のトラブルになった場合、はなから貸主側に勝ち目はないのである。
 したがって管理会社やオーナー側としては、こうした交渉人に対し、正面切って対決するのではなく、彼らにつけこまれないような対策を講じていくことを考えるべきといえよう。

 若い入居者からの依頼が急増
 4年前から広島市を中心に、入居者に向けた敷金返還のアドバイス業務を行っているC社。これまでに約5000件を手掛けました。広島市では敷金3カ月、礼金ゼロというのが相場ですが、退去時に敷金が1円も戻ってこない人が65%にも及んでいました。当社のアドバイスにより約8割のオーナーが交渉に応じ、交渉の席についたオーナーの多くは何らかの形で敷金の返還に応じています。当社は主に法人会貝制度を用いており、借り上げ社宅の解約時に利用されるケースが多いのですが、最近ではテレビCMを行っていることもあってか若い個人の入居者が増えました。これまで手掛けた件数5000件のうち6割強が若い個人で、会員以外の飛び込みの依頼も約4割になります。

物件がないのに原状回復費靖求
 悪質な事例としては、その入居者が退去した直後にオーナーが物件を解体・更地にして売却したにもかかわらず、元の入居者に原状回復費用の負担を求めてきたこともあったという。
 「このケースでは、物件の売却まで同じ管理会社が手掛けたにもかかわらず、当の管理会社が売却を否定、私のところに相談に来た入居者が退去したあとに3カ月間次の入居者が居住していたとしらばっくれるなど悪質でした。私自信がその物件の周辺住民に聞き込みを行って、確かに退去後すぐに建物の解体工事が行われたという証言を集め、それを管理会社につきつけて、やっと敷金を取り戻すことができたのです」(N社社長)
 原状回復時の立ち会いやその後の工事を手掛けるR社(東京都千代田区)の同社長も管理会社の問題を指摘する。
 「仕事柄多くの管理会社と付き合いがありますが『この管理会社はオーナーに対して何も言えないんだな』と思うことがしばしばあります。当社は原状回復を行うに際して入居者・オーナーのどちらがどれだけの費用負担をするのか、という点を部位別に算出して見積もりを出しています。仕事のほとんどは管理会社から請けていることもあり、見積もりについては少々オーナー側に甘く出しているのですが、それでも管理会社から『この部分の費用負担についてはオーナーに説明することができないので削ってもらえないか』などと言われることがあります」
 そして、こうした管理会社ほど「当社に任せてもらえばオーナーさんは原状回復のときも安心です」などというセールストークで管理戸数を順調に伸ばしているという。
 家賃1年分以上請求された例も
 「管理会社が入居者に原状回復費用として600万円を請求するという。とんでもないケースがありました」と語るのは、Nグループ(千葉県千葉市)の同社長だ。
 その物件は都内港区にある家賃45万円の高級マンション。入居者はペットも飼わずタバコも吸わなかったため、部屋にはほとんど傷みがなく、同社長が部屋をチェックしたときには「入居者が負担することになってもせいぜい十数万円だろう」と判断したという。
 実はこのオーナーは財政的に困窮し、このままでは物件を手ばなすことは必至という状況だった。
 「もし物件が売却されたら管理契約も切られるかもしれない」と心配した管理会社がオーナーが当面必要な資金を都合するために、原状回復費用を大幅に水増しすることを考えたのだという。
 「そのオーナーは、とり急ぎ300万円必要だったのです。でもそれならば300万円請求すれば済みます。そこに600万円請求したことの理由があるのです」(同社長)
 何百万円などという高額な原状回復費用を請求すれば、入居者側が不満を申し立ててくることが当然考えられる。その場合、裁判で決着をつけることを想定したのだ。
 「裁判所は両者の主張の中間をとって和解させたがる傾向があります。管理会社側としては600万円請求すれば裁判所が半額で和解を勧告してきたとしてもオーナーが必要300万円は確保できる、と計算したようです」(同社長)

オーナーを守るあまり違反を行う
 これに対し管理会社の中には「オーナーに日々の家主業の煩わしさから逃れてもらうのが管理会社の責務、それにより管理戸数も伸びているのならばいいのではないかという声もあろう。
 しかし、N社社長はこう警告する。
 「管理会社の中には、オーナーに嫌われたくない一心でガイドラインについて全く説明をしていないところもあります。もし入居者が敷金返還をめぐって『ガイドラインを守れ』とオーナーを訴えた場合、オーナーが『ガイドラインについて管理会社から全く説明を受けていない。ガイドラインを知っていればそれに沿ってしっかり対応しており、訴えられるようなことはなかった』と管理会社を訴えるケースも考えられるのです」
 オーナーに対し厳しいと思えるようなことでもきっちりと説明するのが、真にオーナーのことを考える管理会社なのではないだろうか。
 「実際、ガイドラインをしっかり説明するなどオーナーにとって厳しいこともきっちり伝える管理会社は入居者とのトラブルも少ないようです」(R社社長)

 敷金と原状回復費の混同が争いの種
 入居者の代理人としてオーナー・管理会社を相手に敷金の返遼交渉を行っています。現在までに300件を手掛けましたが、全く敷金を取り戻せなかったのは2%です。それだけ貸主側が借地借家法やガイドラインを無視した手法を用いてきた、ということです。もちろんオーナーや管理会社側にも言い分はあると思います。例えばペット禁止の物件であるにもかかわらず、それを無視して室内をひどく汚した入居者に敷金を返すというのは納得がいかないかもしれません。しかし敷金とは入居者が家賃滞納を行ったりしたときの保険として預かっておくものであって、それを原状回復の費用として充当することは誤りなのです。もし、先のような理由で、オーナーに金銭負担が生じたとしても、一度敷金は全額返した上で入居者に損害賠償請求を行えば済むことではないでしょうか。これまで、当社ではほぼすべての案件で敷金を取り戻すことに成功しています。これからも分かるように、ガイドラインも出来た今、交渉となったら貸主側に勝ち目はありません。これまでのやり方が誤りであったことに早く気づかなくてはならないでしょう。

代理人ビジネスは法律面で問題も
 さて、文中では敷金返還交渉代理人という呼称を用いてきたが、実はこのビジネスは弁護士法に触れる可能性があるという。弁護士も「正直言ってグレーゾーンなのではないでしょうか」と解説する。
 現在、法的行為の代理人には弁護士以外の人物はなることができない。ヤクザなどの不当勢力が代理人として交渉の窓口となり、交渉事が正しく行われなくなることを防ぐのが目的だ。
 これは敷金の返還を求める行為においても同様で代理人となることは認められていない。(アドバイスはできる。例えば「裁判を起こしたらどうだ」と助言はできるが、その人物が入居者の代理として直接貸し主と交渉したりすることはできない)
 また、この代理人については「業」として行ってはならないともされている。つまり報酬について前もって取り決めたり、仮に無報酬であっても反復継続して代理行為を行ったりしてはいけないのである。
 したがって、貸主側は、仮に弁護士以外で「代理人」を名乗る人物が敷金の返還を求めて交渉を求めてきた場合には「あなたに代理人の資格はない」と言って、交渉を拒否することは可能であるという。

 弁護士法に抵触するおそれも 
 弁護士以外の人物が法的行為の代理人となることは、弁護士法で禁止されています。したがって、入居者の敷金返還交渉を代理で行うビジシスは、この弁護士法に触れるおそれがあります。この場合ポイントになるのは、代理人を「業」として行っていたかどうかです。事前に報酬などについて取り決めを行った上で代理人行為を行えば、完全に業として行っていたと解釈されますし、仮に無料で行っていたとしても代理人行為を反復継続して行っていれば業としてみなされるでしょう。管理会社やオーナーとしては、入居者の代理人が出てきた場合、その代理人が法的に正しいものではない、として彼との交渉を拒否することもできます。しかし「敷金を返してほしい」という入居者側の主張そのものが法的に正しくないわけではないので注意が必要になります。

(全国賃貸住宅新聞2004.8.30より抜粋)


 東京ルール以降、千葉を含む3県も原状回復に関する問題に積極的に関与をはじめました。確かにガイドラインは法律ではなく目安ですし、契約自由の原則からすれば家主さんがこの条件でなければ貸さないといい、その条件を不服に思いつつも借主がその条件で借りますといった以上、あとになってからあれこれ言い出すのは公平ではないような気がします。
 しかし、裁判所がガイドラインを支持し、消費者が支持し、行政までも支持する現在、それに反対する少数派の大家さんの意見を通すことは難しいでしょう。今後は、お互いの誤解のないように、契約前に十分納得した上で契約ができるような、透明なシステムが必要でしょう。不動産会社から見て、貸主・借主双方が大切なお客様です。弊社と携わるお客様すべてが、ご満足いただけるよう、努力を続けていきたいと思います。
 今後、敷金の精算方法が明確になることにより、一部の大家さんにとってはこれまでに比べ、リフォーム費用の負担が大きくなりますが、大家さんが損をするのではなく、民法の原則に帰るのだということをご理解いただきたいと思います。まして、貸すために(収入を得るために)資金を投与するのですから、決して損をするわけではありません。

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