敷金精算トラブルなんか怖くない!
「少額訴訟に勝つ契約書」
敷金トラブルによる少額訴訟が増えている。東京都簡易裁判所で起きた訴訟は、前年と比較して約100件多い513件にも上っている。賃貸人側が劣勢の中、判例を基にトラブル回避できる契約書の作成方法に迫る。

判決を決定した業者側の主張
 平成12年にサブリース業者が勝訴した判例がある。
 まず、勝訴した要因として挙げられるのは、争いの舞台を地方裁判所に移したことだ。この類の訴訟だと少額訴訟に持ち込まれるケースが多く、開廷されるのは簡易裁判所になる。「簡易裁判所の裁判官は消費者よりの裁判を下すケースが多い」と現場をよく知る弁護士は語る。簡易裁判所の裁判官は資格を持たない裁判所書記官の中から選考されるからだという。
 「少額訴訟の場合、通常訴訟に移行することが先決です。通常訴訟に移行すれば、納得のいかない判決が出たとしても地方裁判所に上告することができます。」
 平成12年に勝訴判決の出た裁判で、被告のサブリース会社側弁護人を担当したSSD法律事務所(東京都渋谷区)の佐藤文昭弁護士はこう語る。
 少額訴訟を通常訴訟に移す手続きには、それほどのコストはかからない。敷金返還請求額20万円の訴訟では、3000円の印紙代と郵便切手代などで、6400円前後。ただし、弁護士を依頼すれば相応のコストがかかることは頭に入れておかねばならない。
 実際に、佐藤弁護士が担当した判例でサブリース業者側の勝訴判決を下したのは東京地方裁判所だったこの判例の争点は特約であった。
 この判例では東京地方裁判所は、「消費者保護の観点は重要な視点となり、近時ますますその重みを増していることは疑いようのない事実」とし、「敷金の返還の場合において、自然損耗分を賃貸人が負担すべきであるとの判断も、実質的妥当性という観点からは一つの合理性を持った見解であると評価できる」と自然損耗分も賃借人負担であるとした特約について異議を唱える見解を示した。
 しかし、その跡に「取引の安全、契約の安定性もまた重要な観点として、考慮されなければならない」と「契約事由」「私的自治」の原則が有効だという判断をくだした。
 要するに「明らかに特約を認識できる契約書に入居者が判を押した」という事実で契約が有効と認められたというわけだ。消費者保護の視点で特約の内容そのものが無効になるという主張に、契約書の有効性が勝ったということになる。
 「特約を盛り込む場合、重要なのは、賃借人に負担してもらう内容を明確に記載することです」(佐藤弁護士)
 この判例で被告となったサブリース業者は、「畳の取替え」「襖の張替え」「クロスの張替え」「ハウスクリーニング」の費用は自然損耗分も含め、賃借人が負担すると特約に記載。細かい文字が並ぶ契約書の中でこの部分を目立つように赤字で強調していたことも、裁判所が同契約を有効と認めた判断材料となった。

ガイドライン重視の傾向にある法廷
 「訴訟では国土交通省から出されている『原状回復ガイドライン』を重視する傾向にある」と話すのはことぶき法律事務所(東京都新宿区)の亀井英樹弁護士だ。
 現在、話題になっている敷金返還に関する集団訴訟では民法、消費者契約法などが入居者側の主張の根拠とされている場合が多い。
 一般法に対し、ガイドラインは法律ではないものの、裁判所では「特別法」的扱いをする傾向にある。そのため、敷金精算・原状回復に関する項目は、賃貸借契約を結ぶ段階から原状回復ガイドラインに則った規定をしておくことが理想だという。
 「ガイドラインを有効に使うには、管理会社・オーナーがこの中身をしっかりと把握しておくことが重要です。さらに、入居時に居室の状況を詳しく書類に記載し汚損などがある場合には画像で保存しておくことですね」(亀井弁護士)
 この段取りを踏み、退去の際には立ち会って入居時の状況と比較すれば、ガイドラインに沿って費用負担区分を明らかにすることはそれほど難しくないという。
 「要は入居者が納得してくれるような材料を形としてきちんと持っているかどうかということです。それができていれば、敷金精算でトラブルに発展するということはそれほどないはずです」

業者に問われる説明義務
 しかし、契約書の工夫だけでは安心はできない。契約の有効性を主張するためには仲介業者には、その説明責任義務が厳しく問われる。
 M社(千葉県千葉市)では、仲介側として説明責任を果たすため、賃貸借契約書に敷金精算に関する明確な費用負担を記載している。
 この費用負担表は、日本賃貸住宅管理業協会(日管協)のモデルを使用したもの。平成7年からこの表を採用し、敷金に関するトラブルは多くて1カ月で1〜2件になったという。
 この表では、壁などの共通部分、ドアスコープなどの玄関部分、給湯器類などの台所部分など7つの部分に分けた計37の対象箇所に関し、オーナー側と入居者側の費用負担を100:50の割合で明らかにしている。
 重要事項説明書にも同様の内容を記載。更に敷金精算に関する事項も設けている。
 重要事項説明書には「賃貸借契約書に特約がある場合、その特約内容は入居者負担」というような事項も記されている。訴訟で特約が争点となった場合、きちんと入居者に説明したのかどうかの証拠の一つとなる。こうした過去の訴訟や判決を参考にしトラブルを回避するための項目がこの敷金に関する事項には盛り込まれている。
 万が一、訴訟に発展した場合でも仲介業者として説明責任を問われることの無いようにするためだ。
 さらに、入居者・オーナー双方に対し、契約で交わした内容を果たすための措置でもある。

オーナーの説得に注力する管理会社
 「これまで自然損耗分も含め、入居者負担」というのが常識となっていた家主も多い。
 そんな状況の中で管理会社が苦心していることの一つがオーナーの説得だ。
 原状回復ガイドラインに沿ったやり方で敷金精算を行っていくためには家主側に納得してもらう説明が欠かせない。
 では、各管理会社はどのようにして行っているのだろうか。
 A社(東京都町田市)は、ガイドラインについて説明した小冊子をオーナーに配布することで、オーナーの理解を得ている。
 同社では、基本的にガイドラインに沿った対応をしており、2年半ほど前からオーナーに小冊子を用いて説明している。
 小冊子では、ガイドラインの概要と、原状回復費用をめぐる裁判の判例について説明されている。
 最も重要なのは、以前のように原状回復費用の大半を敷金の中から精算することはできなくなってきている点をオーナーに理解してもらうことだ。
 冊子は直接手渡しをすることもあれば、郵送で送ることもあるという。
 配布を初めて2年半が経過し、オーナー側の理解もだいぶ得られるようになってきたという。

ガイドラインを説明した資料配付
 ガイドラインに準じた形で原状回復費を算出し、オーナーに対して説明しているのがH社(東京都町田市)だ。
 同社では、平成13年1月から、原状回復についての説明をオーナーに対して行っている。
 入居者の間で原状回復費をめぐってトラブルが生じたことがきっかけだった。
 同社は裁判所の判例とガイドラインに基づき、入居者側に立った対応をとったところ、オーナーとの間に溝ができてしまったという。
 「自然損耗までを原状回復費に含めるというオーナーさんの常識と、自然損耗の回復はオーナー負担とする判例は大きく違っています。当社ではガイドラインに基づいた対応をとる方針ですので、オーナーさんからの理解を得るために、資料を作成して説明しています」
 資料には、原状回復ガイドラインがわかりやすく説明されている。このオーナーへの説明を徹底してきた結果、大多数のオーナーの理解を得られているという。オーナーが同社の方針に賛同できない場合は、敷金精算をオーナー自身でしてもらっている。
 ガイドラインに沿っていれば、入居者とのトラブルはほとんどおきないのだという。オーナーの理解を得られれば、問題ないというわけだ。

敷金精算の査定は裁判官の裁量次第
 実際の訴訟では、どのように原状回復費用負担が決まってくるのだろうか。
 ほとんどは、担当裁判官の心証で決定されることが多い。その訴訟で問題となっている原状回復の箇所別に、担当裁判官が現場の資料を基にして、「この箇所に関しては、○%が家主負担、○%が入居者負担」というように判断する。いい面でも悪い面でも担当者の意識次第で、判断には差が出てくるようだ。

ガイドラインを説明した資料配付
 「現在、訴訟に発展している事例は消費者契約法施行直後に契約を結んだケースが多いのではないか」と語るのが弁護士法人淀屋橋・山上合同(大阪府大阪市)の上甲悌二弁護士だ。
 消費者契約法は平成13年4月から施行されている。
 現在、増加中の少額訴訟で入居者側の主張の中心となっているのがこの消費者契約法である。そのため、契約書という点で管理会社・オーナー側で施行直後の消費者契約法に対応しきれなかったというケースが多いようだ。
 「現在起こっている少額訴訟の判例を参考に、管理会社側でも契約書に工夫を盛り込むところが増えてくると思います」(上甲弁護士)
 サブリース会社が使うことの多い特約に関しても、訴訟の際、有効性の認められやすい条項が記載された契約書がこの先、増加することが予想される。
 しかし、特約にしてもどんな項目でも明確に記載すればいい、というものではない。各社が契約書に関して独自の工夫を行った後にはその内容に関してどこまでが合理的と判断されるものなのか、消費者契約法を根拠に精査される判例が増えてくるだろう。
 また、訴訟の時に気をつけておかねばならないのが住宅金融公庫法との兼ね合いだ。同法では自然損耗による畳・襖の張替え、クリーニングなどを賃借人に負担させてはならない、と規定されている。
 銀行からの融資を受けているオーナーやサブリース会社ならば問題はないが、公庫融資を受けているオーナーはこうした点にも注意が必要だ。

(全国賃貸住宅新聞2003.6.2より抜粋)


 以前より取り上げて参りましたが、敷金精算のトラブルについては後を絶ちません。
 平成10年に国土交通省(当時建設省)より原状回復ガイドラインが発行され、テレビ等のメディアにも原状回復トラブルが頻繁に取り上げられている現在、入居者側の権利の主張が非常に高まっております。
 当社より退去の度、オーナー様へ退室精算の内容について、ご相談、ご報告をさせていただいておりますが、前文の事例にもあるように、トラブル回避のためにも、再度、原状回復ガイドラインを重視し、それに沿った退室精算をお薦めしたいと考えております。
 ご入居者様へより良い住環境をご提供できるよう、オーナー様へ各種ご提案を重ねていくなかで、原状回復ガイドラインについても、よりご理解を深めていただけるような資料を作成し、ご提案させていただきますので、オーナー様のご協力とご理解をいただけますよう、今後もよろしくお願い申し上げます。

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