立退料に相場無し


 立退料はどのように決まっているのだろうか?新家賃の○カ月分、いや旧家賃の○カ月分、などとその金額設定はさまざま。入居者の中にも足元を見て少しでも多くの金額を得ようと請求してくるものもいる。これをいかに安くするのか。経験者だけが知る成功ノウハウを紹介する。

8年間かけた交渉が結実
 立ち退きと建替えのメリットは新しい収益資産を生み出せる点にある。
 オーナー自ら立ち退き交渉に乗り出し大成功を収めたのが、東京都荒川区在住のO氏だ。もともと370坪の土地を持つ地主だった。その中に自宅と借地権者5人の住宅。借家人2人が住む賃貸住宅と、一軒家があった。12年前、自宅の老朽化を機に建て替えを考えたところ、問題が持ち上がった。戦後、敷地を少しずつ借地にしていたため接道地が建築基準法の条件を満たせなくなっていたのだ。
 現行の建築基準法では最低2mは道路に接していないと建物を建築できない。しかし、借地と賃貸住宅を除くと1mあまりしか接道地がない変形地になっていたのだ。自分の土地なのにこのままでは建てるに建てられない。そこで、借家人、借地人の立ち退きを行うことになった。
 5人の借地人、2人の借家人はすんなり退去したが1人の居住者との交渉がもっとも難航した。戦後の混乱期、この土地には勝手に住み着いた人がいた。その人とオーナーとは何の契約もしていない。しかし、長年無断で住み続けたあげくに、勝手に他人に土地を売却した。登記書もないままに土地を購入したのが、その居住者だった。もちろん契約書など無いが、いつの間にか当然のように居住権を主張するようになった。同氏の亡くなった祖母がわずかばかりのお金を受け取っていたため「借地人」扱いになっていたからだ。
 これらの権利関係を8年かけて精算し、何とか500万円を払って立ち退いてもらうことができた。ディベロッパーの協力を得て14階建て全61戸、店舗7戸の物件「ロイヤルシティ西尾久」を建築したのが約4年前。このうち55戸を分譲で販売し、もともとの地主である同氏が3戸を取得。そのうち2戸を賃貸用としている。
 「以前は賃料収入もほとんど無く、自宅の建て替えもままならない状態でしたが8年間かけた交渉の結果、1円も出費することなくマンション3室を取得し、"資産"として再生することができました」(同氏)
 同物件は周辺でも最も大きい高級マンションで分譲部分
は即完売。賃貸用の住居もほとんど空室が無いという。

準備期間がないばかりに...
 ただしいつもうまくいくわけではない。中には高額の立退料になってしまうケースもある。
 昨年の1月、J社(群馬県前橋市)でオーナーから相続税が払えないので物件を売るため立ち退きを行って欲しい、という依頼があった。物件は築年数が20年経っている6戸のファミリータイプの物件で、家賃は5万円。その時点ですでに空室が1つ発生している状況だった。
 相続税の納入期限はその時点から4カ月となっており、この時点で入居していた5家族に対する立ち退き交渉を開始した。
 同社では立退料の相場は引越し料の実費の2倍に迷惑料を足したものとして交渉したが、迷惑料の設定は予想外に難航した。ほとんどの入居者が、住んでいた家賃の10カ月分に相当する50万円という金額で解決したのに対し、1件だけ退去に対してなかなか首を縦に振らなかったのだ。期限ギリギリになって要求してきた金額は家賃の100カ月分に相当する500万円になってしまったという。
 「相続税を納入する期限が迫っていたため、経った4カ月という短い期間だったことから立ち退きを前もって通達することもできませんでした。そのため、このケースでは最低でも50万円、最高では500万円に及ぶ立退料が発生してしまいました」(同社社長)

正当事由の強さが法廷ではものを言う
 これほどの無茶な話ではなくとも法外な料金をふっかけられたという話はよく聞く。オーナーや管理会社には高すぎる要求に対し講じる手立てはないのだろうか。
 一番に考えられるのが法律だが、実は立退料を請求することに法的な問題はない。不動産に詳しい江口弁護士によると(東京都千代田区)立退料は借地借家法において、立ち退きに対する代替物として定義されているという。
 本来、正当事由がない「住む権利」を放棄する対価として認められているのだ。価格や範囲など詳しい内容については明確な定義はないため、しばしばトラブルの原因にもなってきた。但し、一つ目安となるのが正当事由だという。
 法廷で争うことになった場合、金額の設定は物件の老朽化の度合いやそれまでに入居者が契約を忠実に履行して信頼関係を損ねていないかどうかといったことから判断されるからだ。また代替家屋の提供なども立退料の設定を下げることができるという。
 「正当事由がきちんとしているほど立退料は安くなります。ただし、注意して欲しいのは相続税を支払うために物件を売りたいというのは正当事由にはならないということです。これは賃貸人の事情でしかないからです」(同氏)

日曜9時が狙いどき!?
 法的な決まりがない以上、自力で対策を立てていく他方法はない。
 請求金額が値上がりしていく原因の一つが入居者同士の団結だ。初めは「金なんていらない」と言っていた人が、隣近所にいらぬ知恵を吹き込まれ1週間後には「100万円欲しい」と言い出すこともしばしば。これを解決していく方法が通称「朝がけ作戦」だ。
 競売物件の落札代行を数多く手掛ける会社に聞くと、「月末の日曜日の朝一番がねらい目」という。その時ならばほとんどの入居者は給料日後で懐が暖かく、ゴネる人は少ない。日曜日の午前中は外出している人も少ない。そのとき、全室一気に話を付けてしまうのだという。
 8戸あったら8人の社員で行き、同時にチャイムを鳴らす。一気に退去の承諾を得てしまうことがポイントになるという。これで隣近所との相談によって値がつり上がることを防ぐのだ。

入居者の転居先を確保することも
 しかし、立ち退きの問題はその金額を決める点以外にもある。退去したものの移転先がない場合があるからだ。その場合には受け入れ先を探すことが必要になる。D社(東京都目黒区)では、以前自分で移転先を見つけられないという高齢者が2人いる物件を手がけた。同社では1人には目黒区の生活保護を適用して、2人のために次に入居する物件を探し、それまで住んでいた物件の家賃6カ月分を立退料として支払うことで速やかにこぎつけた。
 「高齢者ということで次の物件を見つけることができなかったようです。そこで、当社の社員が受け入れてくれる物件を探し出しました。特に高齢者の場合には、次に住む物件を探し出すこともスムーズな退去には必要といえます」(同社社長)
 さまざまな問題がからむ立ち退きに王道はない。しかし建て替えはオーナーにとって一大事。これを成功させるには何らかのリスクヘッジが必要だ。経験談を参考に充分な準備を心がけて欲しい。(全国賃貸住宅新聞2002.1.21より抜粋)



 幕張本郷のような比較的新しい街では、"立ち退き"や"建て替え"という言葉はあまり耳にする機会がありませんが、あと10年〜20年先はどうでしょうか?
 現在、新築されているアパートはハウスメーカーの努力により、お客様のニーズを数多く取り入れ、10年前の「アパート」にはとてもつかないと思っていた設備が標準でついているところも少なくはありません。
 以前は贅沢品だと思われていた「エアコン」「ウォシュレット」「シャンプードレッサー」等...。今では家賃を上げるために付けるのではなく、最低でもついていなければいけない設備となりつつあります。
 また、分譲マンションの値下がりや金利の低下により、オートロック等、セキュリティのしっかりしたマンションを購入する方も増えております。
 そういったものに対向するために、いずれは物件を建て直し、利回りのよい物件に替えるという選択を選ぶ時が来る時があります。その時になって慌てないよう、ご自身で勉強するという選択もありますが、やはり限界があるのではないでしょうか。
 日頃より信頼のできる不動産会社とうまく付き合うことが、現在、そして将来の成功につながるのではないでしょうか。


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