新法施行で変わる?!
高齢者向け住宅ビジネス


滞納保証・身元引受人保証制度の充実が鍵に
 10月1日、高齢者の入居を拒否しない賃貸住宅の登録制度が始まった。8月に施行された「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に基づいて、いよいよ本格的に制度が開始されるのだ。登録住宅には国による滞納保証を受けられるなど今までにないメリットもある。新法によって何が変わったのか、どのようなメリットがあるのか。また有力管理会社は今後、どのような方針をとっていくのか。始まったばかりの新法を追った。

国費20億円を元に6カ月分の賃料を保証
 この法律のそもそもの目的は高齢者が住める賃貸住宅を増やすことにある。現在、65歳以上の人を受け入れているアパート・マンションの数は驚くほど少ない。
 今年2月から3月に東京都足立区は東京都宅地建物取引業協会足立区支部に所属する全会員を対象にアンケートを実施した(調査対象475)。
 それによると高齢者の入居が可能な建物の割合は10%未満が最も多く42%にのぼった。ついで10〜20%未満が19%、なしが12%にも達した。(下図参照)
 入居できる物件が少ない理由の最大要因がオーナーの不安だ。特に滞納についての不安をあげる人が少なくない。
 そこで新法では滞納保証という切り札をつくった。それが「高齢者居住支援センター(仮)」が行う滞納家賃に対する債務保証だ。
 国費20億円を投じてつくった基金に入居者は入居時に賃料の一定割合の掛け金を払う。もし、滞納があった場合にはこの資金から、最大6カ月分の賃料がオーナーに支払われるというものだ。
 滞納が発生した場合、オーナー若しくは管理会社が借主に書面で督促をする。これを証拠として契約解除をしてもらうことになるが、それでも支払わない場合には、6カ月たったところで支援センターに債務譲渡をする。ここでオーナーに滞納分の賃料が支払われる。一方、支援センターは借主に対して弁護士を立てて求償する、と言う仕組みだ。それでも支払わない場合には契約不履行を理由として契約解除、強制執行という一般的な賃貸借契約へと進んでいくことになる。
 対象となる物件は予め都道府県知事に登録する。登録簿は公開され入居を希望する人はそれを見て連絡するというシステムだ。


トラブル対策はまだ不十分!?
 高齢者受け入れのネックとなっていた滞納問題がクリアとなったことが、家主、管理会社の気持ちを揺り動かしたといえる。
 だが、この新法だけで本当に考えられるトラブル全てをカバーしているというわけではない。
 例えば入居者が介護が必要な状態や寝たきりになった場合は、身元引受人が引き取ってくれるのではと安易に考えがちだ。しかし「親戚の間でたらい回しにされ、誰も対応してくれない」といった最悪のケースも考えられる。また、死亡の場合に誰が荷物を引き取るのかという問題もでてくる。
 積極的な業者でもこの件ばかりは頭を悩ませているようだ。F商事では身元引受人がいない場合は契約自体をしないとしている。
 「入居者がいくら元気と思っていても、痴呆になった場合には他の入居者に迷惑をかけたり、火災などの事故を起こす可能性もあります。その時のことを考えたら身元引受人がいない人との契約は考えられません」(同社・専務)
 「当社では必ず身元引受人も入居時に面接しています。また、体が不自由になったら退去していただく旨の特約をもうけています。」
 人の命がかかわるだけに大きなトラブルになる可能性もある。受け入れ先がない限り契約はできないというのが実情のようだ。

グループホームや介護施設と提携
 兵庫県の管理会社H社(兵庫県尼崎市)の同社長も今年竣工した全18室のグループホームの立ち上げに参加した経緯があり、同施設との提携を検討中だ。管理物件の入居者が要介護となった場合、受け入れてもらえるような段取りをすでに組んでいる。
 「当社は今期中に300戸近くの登録を考えています。オーナーを説得したとき『万が一の場合、無理に追い出すことが出来ないのでは』という質問が多かったのです、そこで、当社は『要介護2になったら、身元引受人と相談して引き取ってもらう』という契約にする予定です。しかしこれでは不十分と考え、グループホームと提携しました。もし身元引受人が拒否した場合でも、他の受け入れ先を確保したのです」
 このような対策は今すぐ真似できるものではない。しかしこの点をクリアしないとオーナーからの許可は得にくいと言えよう。管理会社の中には医療機関との提携を考えているところもあるという。

東京都は独自の身元保証制度創設
 一方、自治体も動き出している。東京都では現在、「東京都一人暮らし高齢者等入居身元保証人制度検討委員会」を設置し、独自の身元保証制度を策定している。財団法人東京都防災・建築まちづくりセンターを認定団体とした同システムの特徴は、身元引受人の代わりになるような制度を整えたことだ。
 入居者は入居時に一括で約50万円を支払う。この預託金をもとに損害保険会社の積立火災保険に加入する。10年間の保証期間中に失火などの事故があったときは、通常の保険と同様に補償金が支払われる。注目すべきは入院や死亡などの際だ。何か起きたときには必然的に保険契約が切れる。その際に返される解約返戻金から入院費や葬儀費用を捻出するというものだ。もし期間中、何もなかった場合は預けた積立金が返却される仕組みとなっている。これならば、いざというときにオーナーに負担がのしかかるということがない訳だ。
 また、事故を未然に防ぐために、日頃のサポート体制も整えた。入居者は月々数千円を支払えば緊急連絡や月2回定期的な安否確認をしてもらえるというものだ。
 現在、数社のサービス事業者との折衡を重ねている。10月中旬には始動できる見込みだ。
 「この制度は、身元保証人の代用として万一の時の費用を準備しておくものです。決して安いとはいえませんが、今後ニーズは高まっていくと思います。」(東京都住宅局開発調整部住宅計画課高齢者住宅系主任・相原氏)

平成14年度予算請求にも計上
自治体だけでなく大本の国土交通省も更に制度の充実を目指している。
 「平成14年度予算請求では登録住宅のリフォーム補助金の申請を行っています。また、厚生労働省では公団のシルバーハウジングに派遣されているLSA(ライフサポートアドバイザー)を登録住宅にも派遣することを検討していただいています。全て通るとはいえませんが、今後PR活動も含め積極的な推進をしていきます」(国土交通省住宅局住宅総合整備課高齢者住宅整備対策官橋本氏)
 10月施工とはいえ、法律自体まだ準備が万全とはいえない。しかし、確実に主要なニーズとなる分野だけに期待は大きいようだ。
 この法律の制定に携わった吉田修平弁護士は次のように語る。
 「この法律により、今までより格段に安い値段でいい住宅に住める可能性が出来たといえます」
 これまで賃貸住宅は”安かろう、悪かろう”というものがほとんどだった。その原因のひとつが空室リスクと居座りリスクだ。空いてしまった場合はもちろん賃料が入らない。入居者に居座られた場合、物件を占拠される危険性もあった。新法ではこの点を解決すべく一括家賃前払いによる収益性の安定を図った。また借家権が相続されないため「取られる」心配もなくなったという。
 新しいビジネスとしての可能性は計り知れない。高齢者住宅からは当分、目が離せない。
(全国賃貸住宅新聞より抜粋)



 新法の施行により、高齢者向けの賃貸住宅市場が活発化していくことが予想されますが、まだまだオーナーが抱えるリスクは多いはずです。
 高齢者が万一家賃滞納をしてやむを得ず追い出すとした場合、引っ越し先が見つからなければ人道的にみて、追い出すことは出来ないでしょう。しかも、高齢のうえ、家賃の滞納歴のある人がそう簡単に次の引っ越し先を見つけることは非常に難しいでしょう。
 また、福岡県警から2000年度の独居老人の孤独死の数は555人という驚く数字が公表されておりますが、もし、賃貸住宅の中で気付かれずに数週間が経過してしまった場合はどのようなことになるでしょうか。次の入居希望者には必ず契約の前に事実を説明しなければいけないことは法律で定められています。その結果、相場より安い家賃ではないと借手が付かなくなってしまいます。
 とは言うものの高齢社会の中、高齢者の借りられる賃貸住宅はあまりにも不足しております。「この町に住みたい」と思われる高齢者の方もいらっしゃいます。
 「確実な身元保証人」を付けることを条件にする。警備会社等と提携し、定期的に独居老人宅を訪問する等、オーナーのリスクを軽減する方法を模索し、高齢の方々にも優良な賃貸住宅を提供していきたいものです。


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