ペット共生型物件

 借り手市場といわれているなか入居待ちが続出しているのが「ペット共生型物件」だ。市場に出回っている物件数が圧倒的に少ないのがその理由だ。しかし、鳴声や臭いの問題などトラブルも絶えない。高い入居率をキープするために各オーナーはどのような対策を講じているのだろうか。

万が一でも大丈夫1Fは動物病院

 1階に動物病院があれば、ペットに万が一のことがあったとき、便利だろう。そんな入居者にとって理想的な物件が、東京都目黒区にある「Sマンション」だ。
 オーナーのE氏は獣医さん。自宅兼診療室を建設する予定だった。しかし「どうせ建てるなら賃貸住宅も」ということで、坪当たり約5000円程度高かったが、5階建ての同物件を建てたのだ。
 獣医だけあってありとあらゆる設備が付いているかと思いきや以外にもシンプルだ。
 まず共有部分だが、ここは足洗い場だけ。一応温水シャワーが付いているが、特別ペット用にというわけではない。
 専有部分については共用部とは違い獣医ならではの配慮がいくつか見られる。その1つが換気扇だ。
 「動物病院を始めて30年になりますが、ペットを飼育する上で人間が一番困るのが臭いの問題です。そこでこの物件を建てるとき、換気に一番気をつかいました」(同氏)
 玄関近くに換気口、大きめの窓を2つ、ペット用のトイレ置場のある脱衣場には専用の換気扇も取り付けた。
 におい対策は換気だけではない。「床はCF」「床、巾木、壁、クロスのジョイント部分のコーキング防水」などもその1つだ。
 しかし同物件の人気の理由はこれら設備ではなくアフターサービスの充実にある。
 1階に診療所があるため、緊急の場合、「すぐ見てもらえる」という安心感がある。
 「先日も夜中に入居者から『猫の様子が変』と連絡があり、すぐ治療をしました。幸い大したことはなかったのですが、入居者はこういう時助かるとおっしゃっていました」(同氏)
 その他にも、有料でペットシッターの手配、ペット用品配達、室内清掃などのサービスをしている点も特徴だ。
 同物件の賃料は1DK、32.54uで13万5000円。相場より5%高いが、戸数に対し8倍以上の問い合わせがあったという。設備よりオーナーが実践するアフターサービスの充実ぶりが、高い賃料水準をキープできる要因ではないだろうか。
 同物件では今のところ目立ったトラブルはないというが、まれにマナーの悪い入居者に手を焼くことも考えられる。

入居者が夜逃げ80万円かかったケースも
 先月、埼玉県越谷市にあるペット可マンションで原状回復費用が80万円に上ったケースがあった。この物件を扱うM社(埼玉県越谷市)によると、3階建て3LDK全9戸の物件の1室に若い男性が入居していた。昨年秋の竣工時から住んでいる人だったが、ある時から突然、ぱったり姿を見かけなくなった。
 「工場で働く工員さんでした。若くて自立したいとおっしゃられるので、大丈夫だと思い入居させました。思えばこれが油断だったのでしょう」(同社専務)
 ドッグレース用に利用される運動量の多い中型犬2匹を連れての入居だった。
 「半月たったころから消費者金融の取り立てが来るようになり、犬を残して失踪してしまいました」(同氏)
 主人の帰らない家の中ではストレスがたまった犬が暴れまくり、柱をかみ砕き壁には大きな穴ぼこが空いていました」(同氏)
 これで退去を通告したが原状回復は敷金より80万円もオーバーしてしまった。この費用は分割で払うことになったいう。
 どんなに建物がペット対応になっていたとしても、トラブルが起こる可能性は高い。だからこそソフトの部分が大切だと言う。
 同社では現在約150戸のペット可物件を扱っているが、これまで、トラブルはほとんどなかった。
 例えばその一つが念には念を入れた入居者への説明だ。部屋を探しに来た人にはペットと暮らすためのマナー、モラル、心構えを徹底的に教育する。犬の性格が種類によって全く違うこと、病気への対処法などをビデオを用いて1時間はみっちりと教え込む。それからペットとの直接面接を行い、集合住宅で暮らすためのしつけがなされていることを確認する。もし、しつけが不十分な場合はペットトレーニングセンターへ紹介もしている。
 そして入居してから3カ月に一回の割合で消臭剤を配るなどの名目で物件を訪ね様子を聞くようにしている。もしその際、1カ所でも柱をかじった跡があればすぐさま対処法を入居者に教えてそれ以上の被害が出るのを防ぐ。
 「ペット可物件は入居した後こそフォローが大切です。どのようにして入居者にアドバイスをしていくかというソフトが最も重要と言えます」(同氏)
 M社のトラブルは非常にレアなケースだが、ペット可物件における管理の難しさは、鳴声と臭いの問題だろう。同社と同じようにオーナーや管理会社の中には、飼う側のしつけを重要視し、入居審査時にチェックをする向きが多い。

専用の契約書や特約を使用する
 東京都板橋区周辺で約40棟500室ものペット可物件を管理するT社(板橋区)社長もその一人だ。同氏は不動産管理業の傍ら10棟の物件も所有する。そのほとんどをペット可にしているのだ。
 「当社ではペット可物件専用の契約書を独自に作成しました。通常のものより2ページ多くなっています。また重要事項説明、契約書押印時と、それぞれで30〜40分かけ、規則を説明しております。またこれらの「住まいのルール」に関してはメールで入居者に送信することも欠かせません。当社の社員が週一回規則が守られているかどうかチェックしに行っています」
 これだけルール遵守を徹底しているせいか、入居者間や近隣住民とのトラブルはほとんどないという。
 一方で入居前より入居後の方が重要だという意見もある。
 社団法人日本愛玩動物協会が認知する資格に「愛玩動物飼養管理工」がある。ペットのしつけに関するプロに与えられるこの資格を活用しペット可マンションの企画、設計を手がけるB社(東京都品川区)社員は次のように話す。
 「確かに入居審査時にペットがきちんとしつけされているかをみて、住まいのルールを徹底させることは重要です。しかし入居後も定期的に我々のようなプロを招いて入居者を対象としたしつけ教室を開くべきでしょう。多くの人は間違ったしつけをしています。
 例えば、可愛いあまり、食事の時主人の横へ座らせることがあると思いますが、これでは自分がNO.2だと思い込んでしまい、他の家族の言うことを聞かない恐れがあるのです」
(全国賃貸住宅新聞より抜粋)



 これまでは主に、ペットと同居するために必要な設備面や入居者との契約事項について取り上げてきました。
 今回は、入居者との契約はあくまでもスタートラインであり、そこからどのように快適にお住まいいただくかという例を取り上げてみました。
 各社、各オーナーが様々なサービスを提供し、ペットと共生するための環境造りに励んでいるのが見て取られます。このような環境にいれば、ご入居者の方も一度飼った以上は最後まで責任と愛情を持ってペットと付き合っていくのではないでしょうか。
 モラルをもった飼主が増え、そういった方達が快適に暮らすことができる賃貸住宅が増えることによって、動物が好きな人とそうではない人が共生することができる、「ペットと共生できる街」ができるではないでしょうか。

 動物を飼うことはアニマル・セラピーと呼ばれる癒しの効果があるとも言われています。
■動物が人にもたらす3つの効果
●社会性の改善
 動物による話題提供、会話の促進をする「社会的潤滑油効果」犬を連れて散歩をしていると、
いない時より会話が増える。家族との共通の話題が増えた。
●精神的作用
 動物は人々に対して自尊心、責任感、必要とされている気持ち、自立心や安堵感、
笑いや楽しみをもたらし、ストレスや孤独感を癒すというストレスの緩和作用がある。
●生理的・身体機能的作用
 人が動物に対しての働きかけをしようとする意欲から、日常の運動や動作が多くなり、
動物に対する話しかけにより発語が増える。


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