今どきの入居者トラブル事例

 入居者ニーズが多様化していると言われているが、入居者自身も近年いろんなタイプの人がいるようだ。原状回復リフォームを巡るトラブルはもちろん、滞納、夜逃げなどこれまで経験したことのない事件を抱えて困っている業者が多いという。今回は借主を巡る事件簿を特集、改めて入居審査の見直しを図る必要がありそうだ。


自殺者を発見したのは下階入居者
 今年1月下旬首都圏では近年まれに見る大雪が降った冷え込みの厳しい日のこと。埼玉県にある築10年2DKタイプのアパートに住んでいた60代の男性が首吊り自殺した。第一発見者はなんと真下の階の入居者。外出しようと部屋の外にでたとき、ベランダからぶら下がっている2本の足が目に飛び込んできたという。すぐに警察に連絡、物件を管理するI商事(東京都練馬区)にもまもなく電話が入ったという。
 「一時間後くらいには現場に駆けつけましたが既に死体は警察がレッカーで降ろして運んでいました。発見された住人の方は死体が目に焼き付いて離れないと、1週間後退去されてしまいました」(同社長)
 自殺した入居者は他社付けにより3年前に入居、賃料7万円は毎月きちんと納めていたという。
 「事件後部屋に入ったのですが、壁や天井はタバコのヤニで黄色と言うよりもむしろ黒に近いほどの汚れのようでくっきり家具の跡が付くほどでした」(同氏)
 家族に連絡、室内の家具は全て引き払ってくれとの申し出のもとに処分。これとリフォーム代を合わせてかかった費用は33万円。敷金2カ月を預かっていたため14万円を差し引いた19万円を連帯保証人に要求するため連絡を入れたが行方不明。そこで実の娘に話をもっていったところ「タバコを吸うのは日常的なこと。私が払う必要がないのでは」とつっぱねられてしまった。
 「タバコのヤニなど入居者負担になると説明してもなかなか理解してもらえませんでした。もともと連帯保証人は赤の他人で娘さんじゃなかったこともありますが事情はあっても家族関係が希薄になってきているのではと感じるケースでした」(同氏)
 一時連絡が取れなくなったり時間はかかったものの、月々4万円ずつぐらい5カ月分割で払ってもらえるよう提案し4カ月が経った現在ようやく折り合いがつきそうだという。しかし下の入居者も退去し、当の部屋も1万円賃料を値下げしてもまだ次の入居者が決まっていない状態。同社では入居前の室内の様子を部分部分で写真におさめ原状回復トラブルに対応していると言うが、今回のようにマニュアルにはない特殊な事情のため長引くケースもあり対応策に苦慮しているという。

突然警察に呼び出されると…
 「突然警察から呼び出しされ、部屋の中に入ったのですがそのすさまじさに声も出ませんでした」
 こう言うのはN不動産(熊本市)の同社長だ。
 市内にある築15年の木造アパート。20代の男性が住む部屋の惨状にはただただ驚かされるばかりだったという。
 2DKタイプで賃料4万円。室内の壁一面には明らかに殴りつけたと見られるこぶし大の穴が数え切れないほど。部屋を仕切っていたドアの窓ガラスは割られその破片が床に散乱、裸足で歩けない状態。玄関のドアでさえそのノブが外され穴が空いていたまま。とにかく、感情にまかせて室内の至る所を壊しまくったようだった。
 「入居者自身薬物常習者として意識がもうろうとする中、バッドを振り回し、あまりの音に隣人が警察に通報、病院に強制入院させられました」(同氏)
 もともと近くの会社に勤務するサラリーマン。保証人も両親がなるということで全く問題がなかった。薬物常習者であることなどつゆとも知らなかったという。今回たまたま薬の作用が凶暴性を生み室内破損に至ったのではと推測された。
 原状回復費用は50万円、保証人である両親に費用の請求を行ったところ息子の行った公道にただただびっくりで「そんな額は払えない」の一点張り。部屋をそのままの状態にしておくわけにもいかずひとまずオーナーが費用を立替えて室内を修理、同社が数回にわたる両親との話し合いの結果約8万円ずつ6回に分けて払ってもらいようやく昨年4月その支払いが終了したという。

 これら特殊ケースのみならず特に原状回復に関する入居者とのトラブルは、近年増加している。その理由の一つに、新聞やインターネットなどに「敷金は戻ってくる」といった内容の情報が氾濫しているからだろう。

入居者全員がリフォーム立ち会い
 東京都羽村市で1400戸管理するH不動産、同専務はこう話す。
 「入居者が理論武装し始めているのは事実です。当社でも先日こんなケースがありました。1棟12戸のアパートで、そのうちの1人が退去することとなったのです。通常立ち会いの時、不動産会社と入居者1対1で行うのですが、なんと他の部屋の入居者全員が立ち会ったのです」(同氏)
 つまり、親族でもなんでもない人間が、いずれ自分も経験するからその勉強のためにぞろぞろその部屋にやってきたのだ。そして「ここはオーナー負担だ」や「そのキズは前からあった」という具合に横やりを入れてきたという。
 「事前に連絡を取り合い結託していたようです。あれやこれやといわれましたが、当初の契約書通に請求したら、なんのクレームもありませんでしたがこんな立ち会いは初めてでした」(同氏)
 その他同社では、原状回復についてよく知るある入居者が、「タバコはトイレでしか吸ってませんので、クロスの張り替えはトイレのみ」といってきたケースがあったという。
 こういったトラブルの原因は、原状回復ガイドラインが出されながらも「オーナーと入居者の負担割合が明確ではない」など不明確な点が多いことがあげられる。入居審査だけでなく部屋の使い方の指導などより一層の注意を払う必要がでてきそうだ。

統計報告・消費者センターより
分野別では「サラ金」に次いで3位。「クレーム産業」が改めて明らかに
 「賃貸借契約とトラブルは切っても切れない」−それが明らかになった。
 全国に消費者相談窓口を設けてユーザーからの苦情、質問に対応している国民生活センターからの報告によると、賃貸マンション、アパートなど借家契約のトラブル相談件数が増加し続けているという。
 アパート・マンションについては1986年度には694件に過ぎなかったのが、89年度には2878件になった。90年にはいったん、2660件に下がったものの、年々増え続けて、2000年度は1万4350件にまで達した。2001年度は3月9日時点で1万3782件にのぼっている。
 相談件数全体に対する割合は89年の0.5%から上昇を続け、今では約3.1%を占めている。これは一見少なそうに見えるが、分野別ランキングでは、実は3番目に多い。99年度には1位「資格口座」(5.8%)、「サラ金」(5.1%)に次いで、3位「ふとん類」(3.1%)と同位という不名誉な結果となっている。
 内訳は敷金、礼金など料金に関するものが約67%を占め、この中に入退去時の精算も入っている。
 相談で一番多いのは契約した後すぐに解約した場合だ。戻ると思っていた金が戻らないというものである。違約金、解約料など差し引かれる額に「納得できない」というものがほとんどだという。
(全国賃貸住宅新聞より抜粋)



 トラブルを未然に防ぐよう、当社でも各種の情報を取り、対処できるよう努力しておりますが、上記のようなケースが増えつつある昨今、今まで以上に入居審査等に気を付けなければなりません。
 ただ空室を埋めるのではなく、入居申込書に表れない部分(来店時の態度や言動などから、他の入居者とうまく共同生活をやっていけるのかなど)を家主さんにかわりチェックし、家主さんが入居審査をするための判断材料として正確に伝える義務が私達仲介業者にはあります。
 また、入居者に対しての義務としては、お部屋の使用方法についての指導をしなければいけません。
 特に初めて一人暮らしをする学生さんに多いのですが、ステレオを時間帯を無視して大音響で聞いてしまうことを例に取ってみると、本人は自分の発している音が回りにどのくらい伝わっているのかがわかっていないだけなのです。決して他の人に迷惑をかけようと思ってステレオをかけている訳ではないのです。
 ゴミの出し方にしても、今まで全て親がやってくれていたことを自分でする訳ですから、最初はどのようにゴミを出して良いか分からない人がいるのも当然です。ですから、私達仲介業者や家主さんが知らない人には教えてあげる必要がある訳です。
 そのような入居者とのコミュニケーションが結果として、トラブルの減少につながるのだと思います。敷金精算にしてみても「結露防止のために換気には注意してくださいね」と一言だけでも言ってあげるのと、言ってあげないのでは、カビの発生率がだいぶ変わります。当然にカビの発生したお部屋に比べ発生していないお部屋では、リフォーム費用がだいぶ安くすみますので、家主さんと入居者の双方にとって良い結果になります。
 仲介という立場上、家主さん・入居者どちらか一方の味方になるのではなく、当社を含めた三者で良好な関係を保っていきたいと思います。



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