定期借家権で拡がるニュービジネス


ピアノ可、ペット共住型などコンセプト物件が急増するとの予想も
 60年ぶりの大改正となった定期借家法が施行されてすでに1カ月が経過しようとしている。新法を利用したビジネスについて、例えばシルバー事業を手掛ける企業が、高齢者の住む戸建て住宅の賃貸事業家に乗り出したり、短期貸しに注力してきた会社がマンスリー物件の拡大に着手したりするなど具体的な取り組みもさまざま出てきた。今回は、専門家に、今後予想される賃貸市場の変化についての意見を聞いた。

賃貸住宅の形態多様化
 定期借家権の施行による市場動向を専門家に聞いたところ、様々な形態の賃貸住宅が現れると予想する人が多くを占めた。
 なかでも高齢者向け住宅の供給増をあげる人が多かった。
 例えば土地活用に詳しいMコンサルタンツ(名古屋市)の稲垣税理士は「高齢者向けの賃貸マンションが市街地を中心に増えるでしょう」と語る。
 子供が独立して、持ち家が広すぎるようになると、生活スタイルの変化から交通の便や買い物に便利な街中にある賃貸マンションを求めるようになるのではというわけだ。
 そのため、現在住んでいる物件を、将来的需要を考慮しながら期限付きで貸し出し、自分たちは都心に移ってくる。
 この都心に移動してくる層をターゲットに高齢者対応型の賃貸住宅が市街地に増えるという予測だ。
 一方、「ペット共住型やピアノを持つ人の専用マンションが増えるのではないでしょうか。」というのはK税理士事務所(千代田区)の小林税理士だ。
 「入居者全員が同じ趣味を持っていればペットの鳴き声などの騒音のトラブルも少ないのではと考えます。これまで供給が少なく引っ越しを躊躇していた層も子供がピアノを習っている間や、独立するまでの一定期間住めるようなピアノ可物件があれば移動率も高くなってくるのではないでしょうか」(同氏)

家具付き物件の短期貸し増加
 定期借家権による契約の場合、期限が区切られているだけに入居者層の絞り込みができやすく、これら以外にもコンセプトを持った特殊賃貸物件が増えてくる可能性は高いだろう。
 E社(渋谷区)の飯塚税理士は定期借家権を利用することで、家具付き物件の短期貸しができるようになると予測する。
 「家具付き物件を数カ月の契約で貸すことは、ホテルの長期滞在のようなものですので、フロントサービスが求められると思われます。宅配便やクリーニングの受け取りなどを請け負うサービスを行う業者も出てくるでしょう」(同氏)
 貸す側にしてもどのようなニーズに合わせた貸し方ができるのか。また、そのニーズに見合ったサービスは何なのかを考えることにより、他にはない唯一の賃貸物件を誕生させることも可能となってくる。オーナーのアイデア次第でビジネスの芽は無限に広がっていきそうだ。
 一方は、物件の多様化以外にも新法誕生による市場変化に期待する声は強い。
 「期限を限定した貸し方においては入居者側に制限を付けることになるので、賃料自体は低めに設定しなくてはいけなくなるでしょう。ところが価格競争といっても限度があり、質の競争に転じる可能性は高いと考えられます。物件自体の質が上がることは市場にとってもたらす効果といえるのではないでしょうか。」
 と言うのはY会計(横浜市)山家氏だ。
 定期借家権の施行をきっかけに賃貸住宅のグレードが高くなれば、これまでうさぎ小屋と称されてきた日本にも100u以上の欧米並の大型グレードマンションが続々誕生すると期待できる。

立ち退きのリスク解消で新たな土地活用が
 今回の改正による最も大きなポイントは立ち退きのリスク解消だ。
 S税理士事務所(横浜市)白坂税理士は、「大都市郊外の休耕地など新たな土地活用への道が開けたのではないでしょうか」と語る。
 これまで立ち退きのリスクが原因で、土地の有効利用に踏み出せなかった地主にとってはなによりの朗報だと同氏はいう。
 「現在、大規模小売店舗の多店舗展開が盛んに行われています。特に主要幹線道路沿いなどは魅力的な場所といえるでしょう。地主の方々にとっては定期借家契約を結ぶことによって将来的な利回りと、その後の計画を明確に打ち出せるようになるのではないでしょうか」(同氏)
 良質な賃貸住宅の供給が目的とうたわれる定期借家権だが、きちんとしたルールに基づき新しい活用法として是非とも利用していきたいものだ。
 そのためにも専門家と相談しながら所有する物件を最大限活用していきたい。
(全国賃貸住宅新聞より抜粋)


 定期借家権の施行により、今後、様々なニュービジネスが拡がっていくと思われます。
 但し、法整備を整えず、見切り発車で施行したため、いろんなトラブルが考えられる法律でもあります。今後、取り扱い数が増えるにつれ、定期借家権の長所・短所が浮かび上がってくると予測されますので、折を見てご報告させていただきます。
 また、欧米では当たり前の契約形態ですが、日本では初めての施行ですので、今後の市場をしっかり見定めなにが有効でなにが有効でないかを落ち着いて判断しなければなりません。



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