☆「地鎮祭」「上棟式」等は何の為に、どのようにして行われるのか、その時慌てなくてすむ為に事前にこれだけ知っていれば充分です☆

〜建築諸祭儀の概要・その2〜

「警蹕など、『をし』といふこゑきこゆるも、うらうらと・・・」
 
1.降神・昇神の儀における「警蹕」(ケイヒツ)のこと
 「地鎮祭」は当日の「式次第」にしたがって厳かに進行しますが、神様を「神籬」(ヒモロギ)(神の座とする飾り付けを施された神聖な空間、下図参照)にお招きする儀式に際して、神官が発する「オー・・・・・・」という「警蹕」(神様や天皇の出入りなどに、先払いが声をかけて人々に注意を促すこと)の声の響きには、一瞬、緊張させられます。このむずかしい文字の「警蹕」のことが出てくるのが「枕草子」第20段なのです。
 『御簾(ミス)のうちに、女房、桜の唐衣(カラギヌ)どもくつろかにぬぎたれて、藤・山吹など色々このましうて、あまた小半蔀(コハジトミ)の御簾よりも押し出でたる程、昼(ヒ)の御座(オマシ)(天皇の政務をとられる場)の方には御膳(オマノ)まゐる足音高し。警蹕など「をし」といふこゑきこゆるも、うらうらとのどかなる日のけしきなど、いみじうをかしきに・・・』
 清少納言はこの章段で帝が普段生活されている「清涼(セイリョウ)殿」の内部を描きました。「源氏物語」にも出てきますが、大変雅(ミヤビ)な宮中(内裏)内部の叙述といえます。帝はここで食事や睡眠をとられます。南側にある庭に面して「玄関」があり、殿上人が登れる「殿上の間」があります。その奥に「昼の御座」があるのです。上記の文章の大意は以下のとおりです。
 『御簾の中では、女房達は桜の唐衣などをゆったりとくつろいで垂らして、藤や山吹模様の色々な感じのいいのを着て、小半蔀の御簾から出てくる頃、「昼の御座」の方では、帝にお膳を運ぶ足音高く聞こえてくる。「おーし」という警蹕の声が聞こえるのも、うらうらと、のどかで、日差しがとても素晴らしい・・・』

2.地鎮祭の式場
 「地鎮祭」のような建築工事の祭儀に日常不慣れな「建築主」である土地所有者にとって、当日の式典の進行次第やそれに合わせた自分の行動様式に関しては、少なからず不安がつきまとうものです。一方、建築を請け負う施工業者側は、地鎮祭は日常茶飯事のセレモニーゆえ、こうした土地所有者の微妙に揺れ動く心の葛藤が理解できず、小学生を相手にするように、手取り足取り、当日の模様を説明することは逆に憚られることになります。この意識のギャップが、当日「主役」となる土地所有者に恥をかかせる結果となることを肝に銘ずべきです。親戚縁者、来賓等多数招待した晴れの「地鎮祭」の席で、関係者が慌てないで済むように、一般的なケースを想定した「式場の配置」を設定して解説してみましょう。式場の配置は別図のとおりです。
(1)一般的留意事項
 祭壇は「南向き」または「東向き」とし、「北向き」としないことが絶対条件とされております。普通、「地鎮祭」の儀式を挙行する場所は「注連縄」(シメナワ)で囲ってありますが、ここが、いわゆる『祭壇』と呼ばれるところです。ここは正式には『斎場』と呼称されています。その手前の広い場所がいわゆる「式場」と呼ばれていますが、これも正式には『斎庭』(「さいてい」または「ゆにわ」)と呼称されております。本稿では神饌数が7種の「三方七台」を設例として、神職たる「斎主」も一人というケースを事例として解説していきましょう。
(2)神饌品(御饌)
 神饌案(台)は長さ六尺、高さ三尺三寸と決められております。御饌(ミケ)とは神に捧げる食料や飲物のことで、御饌に供えたものは後に頂きます。

イ、 米・神酒 ホ、 野菜(葱を除く)
ロ、 鏡餅一重ね(紅白または白) ヘ、 果実類
ハ、 鮮魚一尾(またはスルメ十枚) ト、 塩・水
ニ、 乾物盛合わせ(シイタケ・カンピョウ・湯葉・寒天・昆布類)

(3)奉献酒
 奉献酒は祭壇に向かって「右側」に建築主側の奉献酒を置き、「左側」には来賓、設計者、施工業者の奉献酒を供えます。奉献酒は化粧箱入りにし、箱は奉献紙で包み、「奉献」と書き、自分の名前を添えます。祭儀の後、奉献酒は建築主のものを神職へ、来賓、施工業者からの奉献酒は建築主側へ渡します。
(4)鎮物
 柳箱に納められた鎮物を祭壇の上に置き、鎮物埋納の儀のとき、神職が盛り砂の中に入れます。鎮物埋納の儀のない場合は、神籬の下に砂を盛って、あらかじめ埋めておくことがあります。
(5)忌草
 「刈初(カリソメ)の儀」で使用する「草」は、茅、笹等で葉の多いものが使われます。「忌草」は奉書で巻き、紅白の水引きか、麻紐で束ねられ、盛り砂に真上に差されてあります。
(6)盛り砂
 本来、「盛り砂」は神前正中に設けるのが慣わしですが、神職の数や、玉串仮案の位置により変化します。本稿のケースは斎主が一人の場合ゆえ、玉串仮案を祭壇に向かって右側に設けるため、盛り砂は斎庭の左側に設けてあります。
(7)式典上の座席
 座席は祭壇に向かって右側に建築主、事業者、来賓、左側に設計者、施工業者とします。あらかじめ座席の裏背に名札が貼付されている例が多いようです。
(8)直会場・祝宴場
 「直会」(ナオラエ)とは「なおりあい」のことで、祭儀を終えた各人が、各々の「生活になおる」ための儀式であり、神への供物のおさがりを頂戴し、神に近付き融合しようという願いを込めた行事です。したがって人間が食することができないようなものを神前に供えてはならないことになります。また、直会とは別個に祝宴を開くこともあります。

祝宴上



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