☆「地鎮祭」「上棟式」等は何の為に、どのようにして行われるのか、その時慌てなくてすむ為に事前にこれだけ知っていれば充分です☆

〜建築諸祭儀の概要・その1〜

「罪 穢有らむをば 祓へ給ひ清め給へと白す事・・・」
 
1.修祓の儀と祓詞の原点
 私は仕事柄、これまでに何度となく「地鎮祭」や「竣公式」に出席する機会を得ました。一同着席の後、式次第にしたがって儀式が進行します。最初の「修祓」(シュウバツ)のところで神官がうやうやしく祓詞(ハラヘコトバ)を朗々と読みあげます。全員起立で聴く「祓詞」の意味合いをこれまで深く考えたことはありませんでした。たまたまある関連書籍で、「祓詞」は古事記に出てくる話と深く関わっていることを知りました。まずはその「祓詞」をご紹介致しましょう。『掛(カ)けまくも畏(カシコ)き 伊邪那岐大神(イザナギオホカミ) 筑紫の日向(ヒムカ)の橘の小戸(ヲド)の阿波岐原(アハギガハラ)に 御禊祓(ミソギハラ)へ給ひし時に生(ナ)り坐(マ)せる 祓戸(ハラヘド)の大神等(オホカミタチ) 諸諸の禍事(マガゴト) 罪 穢有(ケガレア)らむをば 祓へ給ひ 清め給へと白(マヲ)す事を 聞こし食(メ)せと 恐(カシコ)み恐みも白(マヲ)す』
 古事記の記述によれば、「伊邪那岐命」(イザナギノミコト)と「伊邪那美命」(イザナミノミコト)の二柱の神は、天つ神一同から、『この漂っている国土をよく整えて、作り固めよ』と命じられ、「天の浮橋」から、「天の沼矛」(ヌボコ)をさし下ろしてかき回され、「淤能碁呂島」(オノゴロジマ)を生成されました。この島に二柱の神はお降りになり、まず「国生み」に励まれました。ここに「大八島国」(オホヤシマノクニ)からなる日本の国土が完成しました。その後二柱の神は「神生み」に勤しみました。
 いろいろな神をお生みになった過程で、伊邪那美命は火の神「迦具土神」(カグツチカミ)をお生みになった際に亡くなり、「黄泉」の世界へと旅立ちました。伊邪那岐命は女神・伊邪那美命に再会したいものと、後を追って「黄泉国」まで行かれました。そこで見た愛しい妻神の体には蛆(ウジ)がたかり、大変な変容振りでした。これを見て伊邪那岐命は驚き恐れて、一目散にこの世に逃げ帰りました。やっとの思いで現世と黄泉国との境の「黄泉比良坂」(ヨモツヒラサカ)の麓に辿り着いた伊邪那岐命は、『吾はいなしこめき(醜悪な)穢(キタナ)き国に到りてありけり(私は何と嫌な穢らわしい汚い国に行っていたのだろう)。かれ、吾は御身(ミミ)の禊(ミソギ)せむ(だから、私は身体を清める禊ぎをしよう)。』と仰せられ、筑紫の日向の橘の小門の阿波岐原にお出になって禊(ミソ)ぎ祓(ハラ)え(禊ぎによって、罪穢れや災いをことごとく祓い清めること)をなさりました。まさに、この部分の内容が祓詞の中核をなしているわけです。この禊ぎ祓への際にはさまざまな神々が生り坐します。

2.建築祭儀の種類と概要
 建築儀式のうち、一般にポピュラーなものは「地鎮祭」「上棟式」「竣工式」ですが、このほか建築工事の規模や建築主の要望等により、「立柱式」「鋲(ビョウ)打式」「定礎式」「清祓(キヨハラエ)式」等があります。各儀式の運びはおおむね大同小異ですので、ここでは「地鎮祭」を中心として詳細に解説していくことに致します。また、各儀式とも建築主の要望により、「神式」だけでなく「仏式」等もありますが、最も人口に膾炙(カイシャ)している「神式」に沿って考察してゆきたいと思います。
(1)地鎮祭
 「地鎮祭」は正式には「とこしづめのまつり」と読む場合もありますが、通例は音読で「じちんさい」と読んでおります。また現状の状況によっては「起工式」とも呼称され、単に「地祭」(ジマツリ)とも俗称されたりもしております。地鎮祭は本来的には建築工事に着手する際、その建築敷地の守護神を祠って永遠の安定と建築工事の安全を祈願するものです。また、これらの意味合いと同時に、それまで揉めていた近隣問題の解決の「場」とともに、工事費算定の決着をした建築主と施工業者の手打ちの「場」の意義づけもあるので、式典には主要な近隣代表を招待し、音讐を越えた協力を要請する日本的なセレモニーと考えられます。したがって式典には関係官庁の警察署、消防署等の要人も招待する例も多いのです。(ただし外国にもGROUND BREAKING CEREMONYがある)
(2)上棟式
 古来は「棟上げ」とも称され、木造建築では工匠の道の祖神を祠り、その神恩に感謝し、完工落成に至るまでの守護を祈願する最も重要な祭事でしたが、近時、建築様式が多様化してきたので、建築工事の中間時における儀式として意義を持つ程度となりました。コンクリート造の建物では省略されることも多いようです。因にその時期は、鉄筋コンクリート造(RC造)の場合では、コンクリート打設が 最上階まで完了したときとし、鉄骨造(S造)の場合には、鉄骨建方が完了したとき、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の場合には、そのいずれかの時期を選ぶのが一般的となっています。また「鋲打式」のように、最終筋の鉄骨建方の際の鋲打ちの締め時に行うケース等さまざまです。
(3)「立柱式」
 柱を建て固める儀式で、一般的には鉄骨の第一節の柱を建て始めるときに行います。儀式の内容は、予め用意した鉄骨柱の一部に鋲を差し、ナットで締め、次々と締めた鋲を検査する行事であり、建築主と工事関係者だけで行う内輪の儀式であることが多いようです。(4)「鋲打式」
 「全鋲式」とも呼称され、鉄筋の現場で餃鋲の終了時に行うもので、一般的にはメッキ塗りの『金』『銀』の鋲を使って、建物の骨組みが強固であることを祈念する行事です。
(5)「定礎式」
 この儀式も建築様式の変化とともに一般的になってきた儀式で、建築主、設計者、施工業者の名を記念して、銅または真鍮(シンチュウ)製の定礎銘板を収め、礎石を据える儀式です。
(6)「清祓式」
 建物が完成し、それを使用に供する前に建物全体を清め祓う儀式です。この清祓いが完了して「竣工式」を行う段取りとなるのです。
(7)「竣工式」
 通例では建築主側の主催で行われ、工事の無事完了したことを守護神に感謝し、関係者の労をねぎらい、合わせて落成した建物のお披露目の意義付けもあるので、「落成式」とも呼称されております。


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