東京湾の流れ
 首都圏を控える東京湾は海上交通や漁業生産の場として重要な位置を占めている。また海洋性レクリェーションなどの憩いの場でもある。東京湾の調査は古くから行われており、最初の海洋調査は1909年に農林水産局によってなされたといわれている。そして画期的な総合海洋調査が1929年に神戸海洋気象台によって実施され、東京湾の海洋構造についておおよその姿が知られるようになった。

 第二次大戦後、主として千葉県・東京都・神奈川県の各水産試験場などによって、漁業との関連で湾内の海況とその変化を把握するための努力が長い間続けられている。その結果東京湾内で最も目立つ流れは潮流で湾口部で強く、湾奥部で弱い。流れそのものはそれほど強くないが、湾内の海水交換にとって重要な流れである恒流は、冬期には湾全体では時計回りの還流を形成している。夏期は弱い反時計回りの還流で、冬期に比べて流系の移動・分離・逆転などの変動が起こりやすい。

 下層では冬期とは逆に反時計回りの還流が存在する。河口部は夏冬とも、西側では上層流出、下層流入で、東側では上下とも流入の流れである。東京湾の恒流は風に強く支配されている。黒潮の分流は相模灘から浦賀水道を通じて東京湾内湾部の海況にも影響を与えている。外海の水は内湾水に比べて重いので、外海の影響は海底から伝わり、湾内の水は表層から出てゆく傾向がある。



〇潮流
 東京湾には様々な性格の潮の流れが存在するが、最も目立つのは周期的な潮流である。これは潮汐に伴う海水の水平運動であって、1日2回の半日周が卓越している。

 干潮から満潮までは海水は湾内に流入して上げ潮となり、上げ潮最盛期はその中間、すなわち平均海面のころである。満潮に近づくと流れは弱まり、やがて止まり、そして下げ潮に転じる。下げ潮の最盛期も満干潮の中間、すなわち平均水面のころである。潮が引ききって干潮になると、流れはやみ、やがて上げ潮に転じる。

 上げ潮も下げ潮も、流れはおおむね湾の主軸方向を向いていて、観音崎・富津岬間で最も強く、1.5ノット以上のあり、場所によっては2ノットに達するところもある。一般的傾向として、湾の中へゆくに従って流れは弱まり、湾奥の岸では流れはなくなる。

 潮流は周期的な流れで1点の周りを単に往復すれだけである。半日周潮流の振幅(最大流速)をU(m/s)としてとき、海水はL(km)=14.2×Uの範囲を動き回る。この距離はタイダルエクスカーション(潮汐流程)と呼ばれる。外海の水は潮流によって直接湾内部に届けられるわけではなく、海水は玉突き状態に動いている。そして1周期後には水は元の位置に戻ってしまう。従って潮流自体は、流速は大きくてもその割りに物質輸送能力は弱いことに注意する必要がある。


(参考文献「千葉県の自然誌」財団法人千葉県史料研究財団編)